トンガ噴火後に「火山の冬」は来る?寒冷化で令和のコメ騒動も?

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年明け早々百年に一度とも、千年に一度とも言われるトンガ王国火山の大噴火がありました。噴火のあった島はそのほとんどが吹き飛んでしまっています。

この大噴火の後には「火山の冬」と呼ばれる寒冷化が起こることが心配されています。

火山の冬」による寒冷化が起こると「涼しくなっていいかも」と思うかもしれませんが、過去には噴火後数年たってから冷夏が起こりコメの凶作となったことがありました。

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「火山の冬」とは?

火山の噴出物によるパラソル効果によって寒冷化が起こる

「火山の冬」とは、大噴火による火山の噴出物(火山灰や硫黄酸化物を含んだガス)が地球の大気中に放出されて、この噴出物が太陽光をさえぎって寒冷化が起こるという現象です。

以前は火山灰の粒子がエアロゾルとなって太陽光をさえぎり「火山の冬」がもたらされると考えられていました

このエアロゾルがパラソルのように太陽光をさえぎるため、これを「パラソル効果」と呼びます

THE SANKEI NEWSより

しかし火山粒子はしばらくするとお互いにもしくは水滴にくってついたりして地上に落ちるので、短期的には太陽光をさえぎりますが、長期的な寒冷化の説明には難しいとされています。

軽くて小さい硫黄酸化物が長期間滞留

最近では火山ガスに含まれる硫黄酸化物が「火山の冬」を引き起こす最大の原因だと考えられています。

火山によって噴出された硫黄は酸素と水によって硫酸エアロゾルを作って太陽光を乱反射しますが、この硫酸エアロゾルは火山灰と比べてものすごく小さい(ミクロンサイズ以下)ため、長期にわたって大気中に存在することができます。

そのため、硫酸エアロゾルは長期的に太陽光を散乱することによって寒冷化が進むと考えられています。

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火山爆発指数(VEI)

過去に記録・観測された火山の噴火には火山爆発指数(VEI)と呼ばれるもので爆発規模のランク付けがされています。VEI は Volcanic Explosivity Index の略。

今回のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火には、現時点(1月19日)ではまだ確定していませんが、上から3番目のVEI6相当ではないかとみられています。

ちなみに火山爆発指数(VEI)と寒冷化を関連づける記事や論文は見つかりませんでした。おそらく個々の噴火によって火山の噴出物に含まれる硫黄酸化物の量が違うため、一概に火山爆発指数(VEI)が大きい=寒冷化になるとは言えないからだと思います。

近年のフィリピン・ピナツボ火山噴火で寒冷化が起きていた

1991年6月、フィリピンのルソン島にあるピナツボ(ピナトゥボ)火山が大噴火を起こしました。この時のピナツボ火山の大噴火は20世紀で最大級と言われています。

この時のピナツボ火山の火山爆発指数はVEI6でした。

冷夏による凶作でコメ不足、タイ米を緊急輸入したことが

ピナツボ火山から2年後、日本は記録的な冷夏に見舞われコメの凶作となりました。

当時を知っている方は覚えていると思いますが、「平成のコメ騒動」と言われるコメ不足に陥った1993年、日本は「タイ米」を緊急輸入しました。

タイ米は日本米と違って粒(つぶ)が細長いのが特徴です。日本米と同じようにして炊いて食べていたために、日本人的にはタイ米は美味しくないという印象が付いてしまいました。

緊急輸入に対応してくれたタイ政府に感謝こそすれ、文句を言うのは筋違いだと思うのですが、日本からはたくさんの不満の声があがり廃棄することもあったようです。

これを知ったタイ国民は怒って対日感情が悪化しましたが、当時のタイのプミポン国王(ラーマ9世)は、

今回は私たちが助ける番でしたが、私たちに何かあったら助けてくれるのは日本です。だから今回は許しましょう。

Wikipediaラーマ9世より

と国民に語りかけて収めたと言う逸話があります。

日本国内にもタイ料理店がたくさんできていますし、タイ料理もメジャーになってきているので、今ならタイ米を楽しんで食べられるかも知れませんね。

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冷夏による大凶作で「令和のコメ騒動」も?

今後エアロゾルの流れによっては冷夏となって「令和のコメ騒動」が起こる可能性も否定できません。

しかし一方では今回の火山の噴出物に含まれる硫黄酸化物の量では、気象影響は限定的だとも言われています。

ところが、エアロゾルが流されて行く方向は国境に関係がなく、トンガ王国に近いオーストラリアは大きな影響を受ける可能性があります。

この場合は日本が輸入する小麦に影響があると考えられます。

また去年小笠原諸島で問題となったような「軽石」の漂流で漁業にも影響を与えるかも知れませんね。

参考:

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