冬季北京五輪が始まって4日目となりますが、スキージャンプの高梨沙羅選手がジャンプスーツ規定違反で失格となりました。
ジャンプスーツはチームから与えられるものなので、ご本人には全く責任がありません。
高梨沙羅選手は失格が分かったあと泣き崩れたということで、大変心が痛みます。
また日本を含め5人の女子トップ選手だけが失格となったため、各国から疑問の声が出ています。
スキージャンプスーツの規定はどんなもの?
スキージャンプの規定について調べてみました。
問題のジャンプスーツはもちろん、スキー板の長さやヘルメットの形状についてもかなり細かい規定があることが分かりました。
ここではジャンプスーツの規定についてまとめました。
選手の体の測定
まずは選手自身の体の測定です。
選手はいわゆるパンツ一丁で、コントローラーと呼ばれる人から自分の体を測定されます。
選手は、測定前にコントローラーの立ち合いで自身のアンダーウエアを着替えなければならない。
ボディー、脚、腕の周りは軸に 90 度で測定されるが、以下は例外とする:
測定方法ガイドライン(2021 年 6 月 1 日付)

今回問題になった高梨沙羅選手のももの計測以外は上の写真のような感じで計測します。
ジャンプスーツの測定
ジャンプスーツはすべての箇所で選手のボディーにぴったり合うもののでなければならないという規定があります。
そのために選手の体を測定した値と、ジャンプスーツの測定した値と”ぴったり”合わなければいけないということになります。
スーツの外側を測定する。スーツはまっすぐ平らで、しわがないことをチェックすること。スーツに選択されたポイントをマークし測定する。それから、そのポイントの実測値を選手で測定する。
測定方法ガイドライン(2021 年 6 月 1 日付)

この写真ではジャンプスーツを着た状態での計測をしていますが、股下を計測しているようではありませんね。
過去には「短足スーツ」が流行ったこともあり、実は股下の寸法は結構重要視されています。
というのは、自分の体よりもジャンプスーツを大きくして表面積を増やすことによって飛距離が伸びるからです。
ジャンプスーツの股下の計測によってむささび状態になっていないか、選手の体の股下とジャンプスーツの股下がぴったりかどうかもチェックされます。
ジャンプスーツの厚みは規定なし
ジャンプスーツの規定には下記のように最大許容差が認められています。
直立姿勢でスーツ寸法はボディー寸法と一致しなければならず、最大許容差はスーツのあらゆる部分においてボディーに対し最低 1cm、最大 3cm(女子スーツは最低 2cm、最大 4cm) とする。
測定方法ガイドライン(2021 年 6 月 1 日付)
計測はジャンプスーツの外側で測ります。またジャンプスーツの厚みの規定は見当たらないので、上記の範囲内でジャンプスーツの厚みを決めることになりますね。
ジャンプスーツの外側を計測して、男子なら+1〜+3cm,女子なら+2〜+4cmの範囲内におさめないといけないので、必然的にジャンプスーツの生地の厚みは男子なら0.5〜1.5cm、女子なら1〜2cmの間になります。
アンダーウェアには厚みの規定あり!
アンダーウェアについては厚みの規定がありました。
アンダーウエア
アンダーウエアは二つのパーツ(シャツとパンツ)から構成され、均一の伸縮素材で作られ る。
測定方法ガイドライン(2021 年 6 月 1 日付)
– シャツのフロントパーツの真ん中にあるジッパーを許可する。
– シャツ内側にバックプロテクターを着用する場合、ジッパーはフルレングスを必須とする。
– オーバーラップ部分およびシームの厚さは 5mm 以下でなければならない。
たしかに、下着で厚みをかせがれたら、分厚いパンツを履けば有利になりますよね。
スキージャンプで失格続出もなぜ女子だけ?
高梨沙羅選手が失格した、規定違反とは?
高梨沙羅選手が失格となった規定違反の理由は「両太もも部分が規定よりも2cm大きかった」ということです。
これからすると、高梨沙羅選手の太ももが2cm(半径で1cm)小さくなったか、ジャンプスーツが大きくなったと言えます。
前述したように最大許容差は女子なら+2〜+4cmなので、高梨沙羅選手の太ももの計測値から+6cm(半径で3cm)も太ももが小さくなっている(もしくはジャンプスーツが大きくなっている)ことを考えると、これって本当かな?と思ってしまいますね。
なぜ女子だけ規定違反になっているのか?
現在のところスキージャンプ競技での規定違反で失格となったのは女子だけです。
最初は女子だけ厳しいルールなのかな?とも思ってみましたが、測定方法ガイドラインには男子と女子の最大許容差の数値自体に違いはありますが、許容差の範囲は同じです。
ジャンプスーツのサイズは絶対に変わらないとすると、体型が変化したと考えなければいけません。
しかし2cmも体型が変わってしまうものなのでしょうか?
測定の方法は上の写真のように、水平器・スコヤ・メジャー(巻き尺)を使ったものなので、これでは測定者によっても測定値は変わるし、誤差も大きいといえるでしょう。
また測定するポイントがジャンプスーツと選手の体と本当に一致していたのでしょうか?太ももは円筒形ではないので、少し測定ポイントが上下にズレれば太ももの径は変わってしまいますよね。
でもこれって、男子にも言えることなので女子だけ規定違反になっているのはどういうことなのでしょうか。
まとめると
スキージャンプ競技ではジャンプスーツの表面積で飛距離が変わってしまい、そのためジャンプスーツやスキー板・ヘルメットの規定が厳しくなるのは理解できます。
実際、短足スーツの登場などでルールとの追いかけっこ状態なのでしょうね。
もし今回の悲劇が測定誤差なのだとしたら、三次元測定機を使って誰が測定しても同じ条件で、体とスーツの測定ポイントが完全に一致するようにすれば今回のような不幸は起きなかったのかも知れません。
また「2cm」というのも、小数第一位を四捨五入するとしたなら1.5〜2.4cmの幅があります。
それと、各チームは最大許容差のギリギリまで攻めて表面積を大きくするようにジャンプスーツを調整するようです。
測定誤差を考慮した(かどうかは分かりませんが)「最大許容差」なのだとすると、ジャンプスーツのサイズを最大値側へギリギリ攻めるのも考えものだなぁと思いました。
ともかく、厳格な規定のわりに、測定方法が雑すぎるんですよね。
参考:
デイリースポーツ 高梨沙羅 個人戦と同じスーツでも失格 失格5人は全員女子 五輪初の連戦、影響か
東スポWeb 高梨沙羅を含め5人が失格「なぜ女子だけなのか?」 各国から怒りと疑問の声
International Ski Federation (FIS、国際スキー連盟)