冬季北京五輪、外交的ボイコットとは?過去には日本も

city dawn dusk night
Photo by Pixabay on Pexels.com

冬季北京五輪が来年(2022年)2月4日から開催される予定です。

冬季五輪史上では最多の競技数、109種目冬季北京五輪で実施されます。

大会開催まですでに2ヶ月を切っていますが、ここに来て最近のニュースでは西側諸国による「外交的ボイコット」もしくは「政治的ボイコット」と呼ばれるものを聞くようになりましたね。

外交的ボイコット」とは何か?

外交的ボイコット」は過去にもあったのか?

日本はボイコットをどのようなタイミングで決断したのか?

この記事では、これらについて調べてみました。

Advertisements

外交的ボイコットとは?

外交的ボイコット(Diplomatic boycott)」とは、通常オリンピックが開催されると政府関係者が派遣されますが、これを行わないというものです。

政府関係者のみならず選手団も派遣しないという「全ボイコット」との違いはここにあるので、「外交的ボイコット」もしくは「政治的ボイコット」と呼ばれます。

多くはそのオリンピックでの開会式を欠席することで開催国への抗議の意思が示されるようです。前回の夏季北京五輪においてイギリス首相は開会式を欠席しましたが閉会式には参加しています。

Advertisements

外交的ボイコット、過去の事例は?

過去のオリンピックでの「外交的ボイコット」、選手団も派遣しない「全ボイコット」について、過去の事例をいくつかまとめてみました。

2008年 北京五輪

前回の夏季北京オリンピックでは、イギリス(閉会式は出席)・ドイツ・カナダ・ポーランド・ニュージーランドの首相、そして台湾が開会式を欠席しました(ロイターの記事より)。

日本・アメリカ・フランスは出席しています。

チベット問題などを取り扱う人権団体らによる抗議行動が世界中に広がり、欧米各地では聖火リレーを妨害する活動まで起こりました。

2014年 ソチ五輪

冬季ソチオリンピックではアメリカ・リトアニアの大統領・イギリス・ドイツ・フランスの首相が開会式を欠席しました。

ロシアのプーチン大統領の署名で成立した「同性愛宣伝禁止法」に関して各国で反発が広がっていました。

プーチン大統領は「ソチでは参加者も観客も国籍や人種、性的指向に関係なく満足してもらえるように全力を尽くす」と表明しました(CNNの記事より)。

1980年 モスクワ五輪(全ボイコット)

モスクワ五輪(モスクワオリンピック)は共産圏・社会主義国では初めての開催となりました。当時のソビエト連邦(現ロシア連邦)の首都、モスクワで行われたためにモスクワ大会と呼ばれます。夏季オリンピックでした。

しかしこのモスクワ大会の前年にソビエト連邦によるアフガニスタンへの侵攻が行われたことに対して、当時のアメリカ大統領(ジミー・カーター)が抗議し、西側諸国へボイコットを呼びかけました。

その結果、日本を含む西側諸国やイスラム教諸国、反共産主義の強い国など50カ国近くがボイコットしました。当時ソ連と対立していた中国もボイコットしています。

The Washington Postの記事によると、1980年5月24日に日本はボイコットを表明しました。これはオリンピックへの国別参加申し込み期限日でした。

上の写真は柔道の山下泰裕選手(現JOC会長)がオリンピックへの参加を訴えているシーンです。JOCは日本政府からのボイコットに対する圧力に抗ってきましたが、最終的にはボイコットを決定しました。

1984年 ロス五輪(全ボイコット)

前回のモスクワオリンピックの次に開催れたのがロサンゼルスオリンピックです。

史上初の完全民営化で行ったロサンゼルスオリンピックは、税金を1円も使わずにむしろ400億円の黒字を出したことでも知られています。これ以降オリンピックは商業主義、商業五輪などと呼ばれて批判されることも多くなりました。

一方、オリンピックを開催するために税金が使われることがなければ政治的な影響も受けないはずだと、現地のオリンピック委員会は考えていたことも事実です。

しかし前回のモスクワオリンピックでの西側諸国のボイコットに続いて今度は東側諸国がボイコットすることになり、残念ながら政治的な影響を排除することはできませんでした。

Advertisements

2022年 冬季北京五輪のボイコット状況は?

本日(2021年12月12日)の時点ではアメリカ・オーストラリア・イギリス・カナダが外交的ボイコットをすでに表明しています。フランスは「外交的ボイコット」には参加しないと表明しています。

日本政府は今のところ態度を明らかにしていませんが、アメリカと歩調を合わせる形で政府高官は派遣せずに、山下JOC会長もしくは室伏スポーツ庁長官を派遣するのではないかと言われています。

4.スポーツをすることは人権の 1 つである。 すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。 オリンピック精神においては友情、 連帯、 フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる。

最新のオリンピック憲章 オリンピズムの根本原則より

オリンピックに参加する選手達は、まさにそのオリンピックに合わせて何もかもを捧げてトレーニングをしています。

オリンピックの外の世界ではオリンピック精神(友情・連帯・フェアプレー・相互理解)は通用せず、また審判(ジャッジ)もいませんが、選手達のためにもモスクワ・ロス五輪のような全ボイコットは回避して欲しいと願います。

Advertisements